「ビジュアルスノウ治療研究の最新の状況はどうなっているの?」「早く症状をどうにかしたい……」と、日々悶々としているのではないでしょうか。
2021年10月14日に、海外研究チームVisual Snow Initiativeより、治療法に関する続報がありました。そちらを翻訳したものを掲載しましたので、ぜひ最後までご覧ください。
Visual Snow News Promising results in VSS Treatment Study | Visual Snow Initiative
VSIからのご報告
2020年初頭、Visual Snow Initiative(VSI)は、Visual Snow Syndrome(VSS)の治療に成功した方からメールを受け取りました。VSIには、VSSの謎に対する何千もの提案や解決策が寄せられますが、私たちは常にフォローアップを行い、あらゆる主張を調査しながら客観性を保つようにしています。
この方は、主治医であるテリー・サング先生(Dr.Terry Tsang)がVSSの症状を軽減してくれたおかげで、VSSになる前のような「生活の質」を取り戻せたとおっしゃっていました。その後、数ヶ月に渡ってテリー・サング先生をフォローアップし、彼女のVSS患者に対する治療経験を語っていただきました。また、同治療を受けた何人かのVSS患者からも、同様に生活を取り戻せたとの話を聞けました。
これにより、彼女がVSSの治療プロトコル(治療計画)を開発し、多くの患者のVSS症状を大幅に改善できたことの確証を私たちVSIは得られました。
・プロトコル(治療計画)とは?
プロトコルとは医薬品などの治験を実施にするにあたって、治験実施者(治験を実施する医療機関)及び治験依頼者(おもに製薬会社)が遵守しなければならない、その治験に関する要件事項を記載した実施計画書のことをいいます。プロトコルには治験の背景、根拠及び目的などとともに、統計学的な考察も含めて、治験のデザインや方法及び組織についても記載され、その治験にかかわる全ての人が遵守する法律のような存在です。
引用元:プロトコル(試験実施計画書) | がん情報サイト「オンコロ」
また、彼女が治療に成功したのとほぼ同時期に、野球選手のVSSの「砂嵐」症状を完全に除去したというチャールズ・シドロフスキー先生(Dr. Charles Shidlofsky)の存在を私たちVSIは知りました。
もちろん、半信半疑でした。しかし、テリー氏の時と同様に、私たちは彼を追跡調査し、その野球選手にもインタビューする機会を得ました。その結果、彼から直接「チャールズ・シドロフスキー先生に診てもらったところ、VSSがなくなって野球ができるようになった」との話を聞けました。
二人の医師はそれぞれ独自に治療法を開発しておりましたが、会ったこともないのにVSS患者の治療法が偶然にも似ていました。私たちVSIはここに着目し、彼らはもしかしたら何か有望なことを掴んでいるのではないかと考えました。
そこでVSIは、チャールズ氏とテリー氏にVSS研究に協力してもらえないかとお願いしたところ、お二人は快諾してくださいました。彼らは一丸となって、VSS患者の評価と治療のための独立したシステムを持つVSSプロトコルを作成しました。2021年1月から現在進行中の研究の一環としてVSS患者の治療を行い、素晴らしい結果を出しています。
なお、この治療法は完治へとつながるものではなく、すべての人に効果があるわけではありません。しかし、大多数のVSS患者がVSSの症状を軽減しながら、生活の質を大きく改善しています。
2021年末に研究が終了した後、彼らは、研究に携わっているVSS関係者およびその他の医療関係者に当プロトコルと治療法を紹介する予定です。その後は、年末までに治療法を最適化したのち、2022年に開催される「VSI Medical Conference」にてその結果を世界中で共有する予定です(対面式またはバーチャル式を想定)。私たちの共通目標は、一人でも多くの人が人生を取り戻せるようにすることです。
テリー氏、チャールズ氏、そして私たちVSIには「具体的な治療法を開示してほしい」との問い合わせが何百件も寄せられています。しかし、VSSは視覚的、非視覚的に多くの症状があり、個人差のある病気です。このため、彼らの治療法は個々の患者に合わせてカスタマイズされており、画一的で万能な方法ではありません。このことを予めご了承ください。
私たちは、彼らのVSS治療プロトコルが今後も良い結果をもたらし、VSSに対する世界初の効果的な治療法となることを確信しています。
後書き
日本にもビジュアルスノウに関心を持ってくださっている医師・研究者の方々がいらっしゃいますが、当治療法について簡単にでも触れられたことはこれまでありません。現に2021年9月24日に掲載された日刊ゲンダイの記事では、下記のように紹介されました。
いずれにせよ、ビジュアルスノーシンドロームは、まだメカニズムもわからなければ、対症療法のめどもない。抗てんかん薬、利尿剤、抗生物質などの投与例が海外で散見されますが、それで症状が消えたというような報告もなされておらず、まだまだ長い時間がかかるでしょう
引用元:目の中に荒れ狂う“砂嵐”が…五輪メダリスト・水谷隼が明かした「目の異変」の正体(現代ビジネス編集部) | 現代ビジネス | 講談社(3/4)
2021年10月1日にYahoo!ニュースに掲載された眼科医平松類先生の記事では、下記のように紹介されました。しかし、「訓練を用いた治療の研究」との文面や文脈からわかるとおり、詳細はぼかされています。
現在は確定した治療法というのがありません。訓練を用いた治療の研究、昔からある脳に関連するお薬を使った報告など治療の報告はあります。※※※しかし決定的な治療法はまだなく模索中です。
引用元:突然起きるつらい症状、卓球・水谷選手の「ビジュアルスノウ(視界砂嵐症候群)」怖さとは【眼科医が解説】(平松類) – 個人 – Yahoo!ニュース
これにより、治療法についてのVSI(世界16カ国のビジュアルスノウ研究者を統括する組織)の熱量と日本の方々の熱量の差に疑問を抱いている方がいらっしゃるかもしれません。
これについては、今回の翻訳文の原文にあるとおりです。医師として治療法に関する具体的な情報を紹介してしまうと問い合わせが殺到してしまいます。
テリー氏、チャールズ氏、そして私たちVSIには「具体的な治療法を開示してほしい」との問い合わせが何百件も寄せられています。
ビジュアルスノウ診療や研究はあくまでも、他の診療業務・研究の一環でしかありません。その中で、現状日本では受けられない治療法について、下記のような問い合わせが殺到すれば、当然ながらパンクしてしまいます。
当障害を認知してくださっている医師や研究者の方は現状では少数であることを踏まえると、いっそうその混乱度合いをイメージできるかと思います。
医師によって告げられたのではなかった。同じ症状に苦しむ人々のサイトなどから見つけたのだ。この疾患は、「国際疾病分類(ICD)」などには登録されておらず、眼科医の教科書にも載っていない…
この病はまだあまりにも不明なことが多すぎる。そもそも疾病分類に入っていないことでもそれはわかると思います。日本でもビジュアルスノーについて研究している専門医は数人しかいないのが現状です。
引用元:突然起きるつらい症状、卓球・水谷選手の「ビジュアルスノウ(視界砂嵐症候群)」怖さとは【眼科医が解説】(平松類) – 個人 – Yahoo!ニュース
このため、今後も当分の間は、当治療法について日本の医師・研究者の方から紹介されることはないでしょう。
しかし、当サイトは一般患者としての立ち位置であるがゆえに、自由に紹介できます。不定期ながら、今後も引き続き紹介していきますので、その点はご安心ください!(^^)