海外論文を参考にビジュアルスノウ症候群(視界砂嵐症候群、雪視症、小雪症候群、以下ビジュアルスノウ)の改善・緩和方法をご紹介します。
カラーフィルターによる砂嵐軽減
シドニー大学の眼科学研究センター『Save Sight Institute』は、特殊なカラーフィルターの着用により患者さんの砂嵐の症状を軽減させることに成功しました。
Case study evidence from the Save Sight Institute at the University of Sydney has reported on the reduction in symptoms of Visual Snow with the use of a coloured filter. Colour filters don’t eliminate the visual snow but can cause it to appear to fade more into the background (see figure above).
シドニー大学のSave Sight Instituteでは、カラーフィルターを使用することでVisual Snowの症状が軽減されたという事例が報告されています。カラーフィルターは、Visual Snowをなくすわけではありませんが、背景に溶け込んで見えるようにすることができます(上図参照)。
引用元:Visual snow | Innovative Eye Care
カラーレンズによる負担の軽減
オーストラリアの検眼医学について情報を提供しているサイト『Australasian College of Behavioural Optometrists』では、ビジュアルスノウやてんかん由来のパターングレアにより失読症を訴える患者さんにはカラーレンズが有用であることが「Pattern glare ; tinted lenses – ACBO」に記載されています。文字のきらつきを軽減でき、文章を読みやすくなるとのこと。また本文中では言及されていませんが、カラーレンズはそもそも光をカットするものなので、光の軽減も期待できます。
瞑想
モナシュ大学の眼球神経(眼球運動)研究室長および教授 Dr Owen WhiteがYoutubeチャンネル『Visual Snow Initiative』の動画内にて述べた意見をご紹介します。
動画投稿日:2020/09/08
VSS患者さんの中で「症状を緩和できた」と報告をする人達が一定数います。 リラックス、瞑想、マインドフルネスといった類のものによって、症状の緩和を体感したそうです。
またそれ以外にも投薬(お住いの国によって、合法・非合法が左右される薬)により、ストレスレべルを下げられたと報告する人達もいます。
総合的な側面から考えると、患者さんが可能な限り自分自身で症状に対処する術を学んだ方が良いと考えています。
VSSの症状は精神障害ではありません。私達には患者さんにそのこと理解をしてもらうためのサポートができます。
私の経験では、患者さんが自身の症状との折り合いをつける上で(”VSS患者としての自分”をある程度受け入れること)、それが唯一かつ最大限の手助けとなっています。
しかし以前も述べたように、確実に患者さんの手助けとなるようなものは、何もありません。
職場でビジュアルスノウの負担を減らすコツ
パート1
ビジュアルスノウを患っている家族や恋人がいる際に、周囲の人にはどのようなサポートができるのでしょうか。またご自身が患っている場合に職場でできる軽減法はどういったものなのでしょうか。
今回はカナダのマクマスター大学 臨床学准教授 Dr. Yasser KhanがYoutubeチャンネル『Visual Snow Initiative』の動画内にて述べたご意見をご紹介します。
この病気を一人で抱え込むべきではありません。もしビジュアルスノウ(VSS)と診断されたのであれば、この病気は患者さんの周りの人々にも影響を及ぼします。恋人や周囲の友人など、さまざまな人達にです。
そのためVSSを患っていることを知っていたりこの病気に関心を持っていたりする全ての人達がこの病気を理解し、サポートすることが非常に重要なことなのです。
その一例として、「(VSS患者さんの容体を)受け入れること」が挙げられます。VSS患者さんは自身の症状に対して為す術がありません。一度症状が発生すると、一切コントロールができないのです。そのため周りにいる人達がそのことを理解し、彼らをサポートしてあげてください。
ビジュアルスノウがどんな病気であるのかを、周りの人が理解することはとても大事なことです。
今の時代はとても簡単にそれができます。世の中には沢山の情報が溢れかえっているためです。ビジュアルスノウに関する情報についても同じで、パソコンやスマートフォンで検索をしてクリックをすると、関連情報をたくさん得られます。
病気のことを理解することにより、症状の軽減につながるあらゆることにおいて、VSS患者さんをサポートできます、
たとえばVSS患者さんにとって、とても配慮の行き届いた環境(遮光カーテンやサングラスなど)を用意することができます。そういった配慮がVSS患者さんのサポートにおいて重要なことなのです。
本当に重要なことなのでもう一度言いますが、VSS患者さんは症状に対して、為す術がありません。
それではどうすれば彼らを助けられるのでしょうか?・・・
それはサポートと配慮です。(動画パート1終わり)
パート2
ビジュアルスノウを患っている多くの患者さんは、従業員として前向きに働いています。
VSS患者さんが第一にすべきことは、一緒に働く同僚や上司など、自分の周りにいる人に自身の病状を伝えることです。
患者さんやご家族が、インターネットからVSSの診断表を印刷し、同僚や上司に自身の病状について伝え、持病について認知してもらうことは、労働環境においてこの病気に対処するうえでとても重要なことなのです。
私が診療した患者さんの中で、これを実践した人がいます。彼女は、ランチタイム中に同僚や上司を交えて、およそ30分間ほど自身の病状について説明をしました。そのことはとても効果的に働きました。
あなたが身を置いている環境でご自身の病状について一度理解をしてもらえれば、同僚や上司から仕事環境をVSSの症状向けにアレンジするうえでのサポートをしてもらえるようになります。
例えば、次のような対策を施してもらうことにより、症状の負担を減らせます。
職場で症状の負担を減らす方法 |
・照明の明るさを落としてもらう |
・白く眩しい蛍光灯を、電球色(オレンジ色)に変えてもらう |
・パソコン画面の明るさを落とすフィルターを買ってもらう |
・職場でのサングラス・カラーレンズの着用を許可してもらう |
・窓にブラインドをかけてもらう |
こういった提案をすることにより、職場の周りの人達に他のものごとにも配慮してもらえるようになるでしょう。
また別の例を上げましょう。ある女性は上司にお願いをして、10分間のヨガや瞑想タイムを特別に設けてもらっています。
したがって職場の人達に認知をしてもらうために、上記のような行動をすることは、VSS患者さんが職場での負担を減らすために、非常に重要なことであると言えます。
まとめ
- VSS患者さんの容態を理解し、受け入れること
- そのためにインターネット上で病気に関する情報収集をすること
- 得た情報をもとに症状軽減のために役立つサポートを施すこと
- 患者さんご自身が職場の人に相談し、環境を整えてもらうこと