アメリカやイギリス、オーストラリアの大学教授が研究チームを組んでビジュアルスノウ症候群(視界砂嵐症候群、雪視症、小雪症候群)の研究をしており、そのチームの名前を『Visual Snow Initiative(VSI)』と呼びます。VSIでは、当障害の診断基準が公開されていますので、そちらを翻訳したものをご紹介します。
ビジュアルスノウ(視界砂嵐症候群)の診断基準
原文にはA~Dのすべてを満たす必要があるのか、一部だけでもよいのかが記載されていませんでした。VSIに確認したところ、下記の回答が得られました。
Since VSS is a spectrum, one does not have to have all listed symptoms in order for it to be VSS. Some may have only a couple symptoms while another person may have almost, if not all.
Additionally from what we know from our experts, one does also not necessarily have to have migraines absolutely, although they can be common!
VSSはスペクトラムなので、記載されているすべての症状を持っていなくてもVSSであると言えます。いくつかの症状しかない人もいれば、すべてではないにしても、ほとんどの症状がある人もいるでしょう。
またVSSに携わってくれている専門家によると、片頭痛はVSS患者に一般的な症状ですが、(診断基準において)必ずしも絶対に必要というわけではないとのことです。
※スペクトラムとは、症状があいまいな境界をもちながら連続していること。
これは考察になりますが、原文の診断基準に上記が記載されていないことを踏まえると、この診断基準は「該当すれば、あなたはVSSです」と断定するものではなく、「VSSの可能性があるね」と可能性を示唆するものであると言えるでしょう。そういったご認識で、当診断基準をご利用ください!
A. 視野全体でとても小さな点が切れ目なく見える症状が3 か月以上持続している |
B. 次の4つの症状のうち、少なくとも2つの視覚的症状がある
1. 反復視 2. 強化された内視現象 4. 夜盲症(夜間視力障害) |
C. 視覚的前兆(閃輝暗点)を伴わない片頭痛がある |
D. 症状は別の病気ではうまく説明できない |
視覚的な症状
- 視野全体に雪のような点が見える(ビジュアルスノウ/砂嵐)
- 小さな浮遊物が見える(飛蚊症)
- 点滅する光が見える(光視症)
- 光に過敏である (羞明)
- 視野から離れた後も像を見続ける (反復視)
- 視界内で像を見る(内視現象)
- スターバースト、ハロー、複視 などの視覚的症状がある
非視覚的な症状
- 「ジー」「キーン」といった雑音がする(耳鳴り)
- 疎外感がある(離人症)
- 不安障害やうつ病の症状がある
- 頻繁な片頭痛、ブレインフォグ、錯乱がある
- めまいと吐き気がある
- 不眠症およびその他の睡眠関連の問題がある
- 全身の痛みを伴い、足と腕のうずく感覚がある
当診断基準の作成協力者
- Peter Goadsby, MD PhD
Professor of Neurology, King’s College London
ロンドン大学キングス・カレッジ神経学教授
Professor Peter Goadsby MBBS MD PhD DSc FRACP FRCP | King’s College London
- Owen White, MD PhD FRACP
Professor of Neurosciences, Monash University, Australia
オーストラリアのモナシュ大学神経科学教授
Owen White | Monash University
- Victoria Susan Pelak, MD
Professor of Neurology and Ophthalmology, University of Colorado, Denver
アメリカのコロラド大学神経眼科学教授
University of Colorado Denver | Anschutz Medical Campus
- Yasser Khan, MD FRCSC
Oculoplastic, Orbital and Ophthalmic Surgery
眼形成、眼窩および眼科外科
Doctor Khan, Yasser – Ophthalmologist | Mississaugahaltonhealthline.ca
Yasser Khan MD, FRCSC | Linkedin
前書き・注意書き
・受診先の医師がビジュアルスノウ(以下VSS) に関する知識が乏しい場合は、本Web サイト(https://www.visualsnowinitiative.org/)を紹介してください。医療コミュニティ内での認知度の向上に役立ちます。
・VSSの疑いがある患者さんは、当チェックシートを医師に見せてください。
・Visual Snow InitiativeのWebサイトは情報提供のみを目的としています。掲載内容は医学的なアドバイスではありません。また専門的な医学的アドバイス、診断、治療の代わりになるものではありません。病状に関する質問は、必ず医師またはその他の資格を有する医療従事者の助言を受けてください。
本サイトで読んだ内容を理由に、専門家のアドバイスを無視することがないようにしてください。サイト内で言及されている特定の検査、医師、製品、手順、意見、またはその他の情報を推奨または保証するものではありません。本サイトが提供する情報への依存は、あくまでもご自身の責任において行われるものとします。
※補足
当サイト「https://www.visualsnow-japan.com/」も同様です。
診断基準のダウンロード
診断基準は、下記からダウンロードいただけます。
当障害の疑いがある患者さんは、当チェックシートおよび英語の原本を印刷し、医師にお見せください。少しでも多くの診断数(症例数)が増えることにより、学会で取り上げられやすくなります。学会で注目を浴びれば、日本での治療法研究が本格的に始動する可能性が高まります。
海外の方では治療法が発見され、治療を受けた人が各症状の改善を報告しています。ただいわゆる治験(薬は未使用)段階であり、確立したわけではありません。2021年6月に2020年10月から開始した治験が終了し、数か月間のレビューを経て医学コミュニティで公表するとのことです。
このため日本でも治療法の研究が行われるに越したことはありません。ぜひ眼科に受診し、当チェックシートおよび英語の原本を印刷し、医師にお見せください。当然ながら取り合ってもらえない可能性も十分にありますが、大学教授監修の当診断基準を持ち込むことにより、ビジュアルスノウと診断される可能性が高まります。