ビジュアルスノウ症候群(視界砂嵐症候群、雪視症、小雪症候群、以下ビジュアルスノウ)をお持ちの皆さんは、「もう一度、綺麗な青空がみたい」「ビジュアルスノウが無ければ、もっと色々なことが…」 などさまざまな思いを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。 私もその一人です。
海外で研究が始まって長い年月が経ちますが、ついにアメリカの医師が視覚的症状および非視覚的症状の緩和・除去に成功しました。
朗報ではありますが、注意点が3つあります。
- いまだ研究過程であるため、 治療法が確立したわけではない
- 「日本での治療実施」の詳細については、まったく不透明である
- 各症状の改善度合いについては、”正式には”いまだ報告されていない
しかし治療の芽が生まれたことは事実です。
「皆さんが今までよりも前向きな気持ちで生活ができるように…」
という思いで翻訳をしましたので、ぜひご覧ください。
New Oct. 2020 Study Announced, Two Physicians Working On Enhanced Protocol to Treat VSS + Potential Conference | Visual Snow Initiative(2020年9月2日発表)
ビジュアルスノウの研究に取り組む二人の医師
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、私達VSI(Visual Snow Initiative)は、優秀で情熱的な二人の医師、 Dr. Terry Tsang(テリー·サング) とDr.Charles Shidlofsky(チャールズ・シドロフスキー)を交えて ビジュアルスノウの研究に取り組んできました。
彼らは患者さんに対して、その症状を緩和および治すことに成功した実績があります。現在も治療するためのプロトコルの改善·新開発に向けて、VSIと共同で研究を行っています。
ビジュアルスノウの研究開始日
VSIは、これまでYouTubeチャンネル『Visual Snow Initiative』にてビジュアルスノウについて投稿をしてきました。それら一連の動画の成果として、治験をするために十分な数の患者さんを集めることに成功をしました。
それに伴い、新しい研究を2020年10月から開始します。
今回の研究にはどのような重要性があるのか
ビジュアルスノウはすべての患者さんの生活の質に悪影響を与えています。
残像や砂嵐などの視覚症状や耳鳴りやかゆみなどの非視覚症状は、種類および程度が多岐に渡り個人差が大きいものです。その症状に耐えられる人もいれば、耐えられない人もいます。
2020年10月に始動する研究では、彼らが既に成功した治療法をより発展させていきます。
当初予定からの変更理由
当初の予定では、彼ら二人の医師が監修する、動画での治療法を展開する予定でした。そして、それが最善の手法であるとも考えていました。
しかしながら、法的な問題や実際に運用をする上で起こりうる不測の問題を考慮した結果、動画での治療は辞めることとしました。その代案として、ビジュアルスノウについての医学研究発表会を近い将来に開催する予定です。
その会議では彼ら二人の医師が、その研究成果を医学界に向けて発表する予定です。
今後ビジュアルスノウの治療法を最適化していく上で、その発表会が重要な成果をもたらしてくれるでしょう。
発表会に出席することができない人達のために、その発表会の内容は録音されるとともに、生配信されます。
症状の個人差における対処
ビジュアルスノウから受ける悪影響には、個人差があるものです。軽度の症状を抱えている人もいれば、重度の症状を抱えている人もいます。
最良の結果を達成するためには、まず治療を始める前準備として、医師は各患者さんがどういった症状を抱えているのかを適切に診断する必要があります。
重度の症状を持った患者さんは、軽度の症状を持った患者さんと同じ場所で治療を受けられれず、症状によって治療法は変わります。
彼らの研究は、多くの側面において意義があるはずです。 (終わり)
ビジュアルスノウの治療に使う道具
検眼医テリー·サング氏がYoutubeチャンネル『Visual Snow Initiative』の動画内にて治療に使う道具の一部をご紹介しました。ここからは、その翻訳文を掲載します。
なお、今回の内容については、翻訳文を読む前に一度動画の治療風景をみていただくと、 内容が理解しやすいかと思います。
翻訳文
ビジュアルスノウの治療の選択肢は幅広く、そして個人の様態によって変化します。 私たちが道具として確実に使ういくつかのものとしては、プリズム眼鏡とヨークドプリズム眼鏡です。
それらの道具は患者さんに自身の視空間を理解してもらう上で非常に役立ちます。壁に貼った4つの図表を用いて眼球運動訓練のようなことを行ったり、ベクトルのようなものを使ったエクササイズも行ったりしています。
後者は、装置を用いた治療法です。患者さんの耐性が強くなるにつれて、より強度を上げていきます。
さらに、お手玉や平均台(体操器具の一種)など様々なものも活用しています。
こういった視覚に対するエクササイズの目的は、誘導された視覚に運動系を誘導させることです。視覚系をリハビリをしていく上で運動系を活用しており、そのためにVRヘッドセッドやプリズム眼鏡などを活用しているのです。(終わり)
翻訳文内の用語解説
プリズム眼鏡とは
一般的に斜視や複視の症状を軽減させるために使われています。
参考:プリズムメガネ | メガネの一心堂
「視空間を理解してもらう」とは
「視空間認知」のことを指しているのだと考えられます。視空間認知とは、目から入った視覚の情報を処理し、空間の全体的なイメージをつかむための機能のことです。
参考:視空間認知って?「見る」ことのメカニズム・検査・強化するトレーニング法、発達障害との関連について |【LITALICO発達ナビ】
平均台とは
平均台(学校の体育の授業で使うもの)のイメージ画像
引用元:平均台|必須の基礎知識-価格帯~メーカー~入手方法まで | SEFT
視覚系とは
眼球、視神経、視中枢(視床、中脳、大脳後頭葉)および眼球付属器(眼瞼、結膜、涙器、外眼筋)からなる ”視覚系組織”のことです。
運動系とは
神経系のうち、全身の運動に関わる部分のことです。
神経系とは
神経細胞(ニューロン)の連鎖によって作られる神経を通して、外部の情報の伝達と処理を行う動物の器官のことです。
後日発表された研究進捗(2021年)
それぞれボリュームが大きくなっていますので、別ページにまとめております。詳しくはリンク先をご覧ください。
ビジュアルスノウ治療のメカニズム
ビジュアルスノウの治療法を発表した2人の医師は、どちらも検眼医です。検眼は簡単に言うと「眼鏡屋+眼科」であり、簡単な眼の診察・治療や眼鏡・コンタクレンズ処方を行います。
上記は一般的な検眼医についてですが、検眼医のなかでも神経検眼リハビリテーションを専門としている「神経検眼医」と呼ばれる方々がいらっしゃいます。これは、脳損傷とその治療法についての医学であり、治療法を発見した2人の医師が携わっている分野です。
However, what makes Dr. Tsang unique is her expertise in neuro-optometric rehabilitation, and her focus on the underserved patients suffering from Visual Snow Syndrome. Neuro-optometric rehabilitation is recommended for patients suffering from visual disorders stemming from traumatic brain injuries and diseases.
テリー・サング医師のユニークなところは、神経検眼リハビリテーションにおける彼女の専門知識をビジュアルスノウ症候群に苦しむ患者に焦点を当てていることです。外傷性脳損傷や病気に起因する視覚障害に苦しむ患者には、神経検眼リハビリテーションが推奨されます。
引用元:Visual Snow Syndrome Treatment in Irvine, California | Dr.Terry sang
脳損傷が起きれば、各感覚器官に支障が生じます。
後天性脳損傷(ABI)は、脳への損傷を包括する用語であり、損傷が神経学的処理に深刻な影響を与えることはよくあることです。
Acquired Brain Injury (ABI) is an all-encompassing term for damage to the brain and it is common for an injury to have profound affect in neurological processing.
引用元:About Brain Injuries & Vision | Neuro-Optometric Rehabilitation Association
リハビリによりこの脳損傷を回復(正確には機能の代替)させられることが、日本の産総研のニュースでも紹介されています。
脳機能回復時に損傷を逃れた脳の領域から新たな神経路が形成
損傷前とは異なる代償的な運動出力路を形成した可能性
脳の変化を適切に促す効果的なリハビリや機能回復技術の開発につながる成果引用元:脳損傷後に新たに形成される神経路を発見 | 産総研
前の章の動画中でテリー・サング氏が述べた「視覚系をリハビリをしていく上で運動系を活用する」とは、まさにこの脳機能の代替を指しているのです。
現時点ではVSIから「神経検眼リハビリテーションを用いた治療」とは公言されていません。ただし、上述した要素により、今回お話しした内容がビジュアルスノウ治療のメカニズムだと考えられます。
一点注意点として、検眼医も神経検眼リハビリも日本には存在しない概念です。このためこの先、いかに日本の医療機関と連携を図り、日本の医療に浸透させていくかが課題となります。
ただ、この点については、先日海外研究チームと日本の眼科・神経眼科医清澤先生の橋渡しを私が行いました。このため、いずれ何らかの形で解決される可能性があります。
ブログを続けて頂き心から感謝致します。近々私も医清澤先生の病院に伺う予定です。今後も更新を楽しみにしております。
こちらこそ温かいお言葉ありがとうございます、
左様でございますか。ご理解のある医師の方に診て貰えるだけでも精神的に楽になりやすいようです。
念のためご共有しておきますが、清澤先生は病院を移転なさっておりますので、
「自由が丘 清澤眼科」をご受診ください!
https://jiyugaoka-kiyosawa-eyeclinic.com/
https://jiyugaoka-kiyosawa-eyeclinic.com/shinkei/7538/